トリ大統領とおじさん
栄誉第一師を知っていますか?
突然トリ大統領がこんなことを言った。私は読んでいた本を閉じ、知らんなーといった。
「あ、すいません。独り言です。」
なんだー独り言か。調べてみると、栄誉第一師とは国民革命軍の一部隊だそうだ。少なくとも広西省までは行ったらしい。その隣には雲南省がある。トリ大統領はかつてそこに行ったことがあるらしい。
彼はその日ある山を登っていた。何かバチバチ音がするので見回してみると、爆竹が背中で爆発してるおじさんがいた。おじさんは背中をバチバチ言わせながら歩いている。しかもチャック全開だ。彼はその状況に戸惑い、おじさんに話しかけることも躊躇した。30分ほど様子を見ていたが、意を決して話しかけることにした。
ちょっとトリ大統領、質問いいか?私はその話に二つの疑問点があった。まず、なぜおじさんはチャック全開だったのか。そして何より、君は30分間何をしていたのか。
そしたら彼は、この後話すからだいじょぶだと言って話を再開した。彼はおじさんに言った。
「あの、チャック全開ですよ...」
「ああ‽」
「あ...えっと...チャックが全開です。」
「ええ‽」
耳が遠いようだ。いや、バチバチしてるからか?
「チャック全開です!!!」
「ああ、本当だ。閉め忘れてたわ。」
おじさんはそういうとチャックを閉めた。何だ、閉め忘れか。彼はおじさんに、何してるんですか?と聞いた。
「歩いてるんだ。」
「どこ行くんですか。」
「隣町だ。」
「えっ、歩いてですか?」
「ったりめーだ。近いわ。」
そうか。会話が続かなくてしばらく微妙な雰囲気になった。おじさんの背中もようやく鳴りを潜めてきた。もう黒いカスだけが残っている。服は背中の部分だけが焦げて破けている。
「なんで爆発してたんですか?」
「あああ‽ちょっと背中掻いてくれないか?」
彼はとりあえず掻いた。痛くないですか?と聞くと、おじさんは「ああ。」とだけ答えた。そしておじさんは礼を言って去っていった。
おいおいトリ大統領、結局30分間何してたんだ?彼は忘れてたというような表情で言った。
「付いて行ってた。」
どうやら30分おじさんを見ながら歩き続けてたらしい。私的には爆竹が少なくとも30分は爆発していたことの方が驚きだったが。彼は随分不思議なおじさんだったなあと語っていた。私はちょっと腑に落ちなかった。絶対痛いだろ。超人か?彼曰く、おじさんは実に平然としていたというが...